開業の資金が足りないとき、最初の候補になるのが日本政策金融公庫(公庫)の創業融資です。ただ、「自己資金はいくら要るのか」「創業計画書に何を書けばいいのか」が分からず、相談に行く前に止まってしまう人は多いはずです。
先に結論です。
- 制度の名前は「新規開業・スタートアップ支援資金」。限度額は7,200万円、返済は設備資金20年・運転資金10年まで(据置はどちらも5年まで)です
- 自己資金の要件は2024年度からなくなりました。ただし公庫は自己資金を「重要な要素」としていて、実際の平均は創業資金の2割程度です
- 審査の中心は創業計画書と面談。申し込みから融資までは平均3週間ほどです
⚠ この記事の数字について
制度と金利は2026年10月13日に公庫・中小企業庁の公式ページで確認したものです。金利は毎月見直されます。申し込む前に公庫の利率表でご確認ください。
1. 創業融資の中身
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | これから事業を始める人、または事業を始めておおむね7年以内の人 |
| 限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内・運転資金10年以内(据置はどちらも5年以内) |
| 金利 | 原則は基準利率。条件に当てはまると特別利率(下の2章) |
| 担保・保証人 | 希望を聞いて相談。創業期の人は原則として無担保・無保証人で使える仕組みがある |
2025年3月に「新規開業資金」から今の名前に変わりました。女性・35歳未満・55歳以上の人向けの区分も、この制度の中にあります。
出典:公庫 新規開業・スタートアップ支援資金/名称変更のお知らせ/女性、若者/シニア起業家支援関連(いずれも2026年10月13日確認)
2. 金利の目安と、低くなる条件
無担保で、税務申告をまだ2期終えていない人の金利は、令和8年10月1日現在で次の範囲です(返済期間などで変わります)。
- 基準利率:年3.85〜5.45%
- 特別利率A:年3.45〜5.05%
- 特別利率B:年3.20〜4.80%
特別利率になるのは、たとえば次の人です(土地のための資金は原則として除く)。
- 女性・35歳未満・55歳以上の人 → 特別利率A
- 市区町村の「特定創業支援等事業」の証明書を持つ人 → 特別利率A(女性・35歳未満・55歳以上にも当てはまれば特別利率B)
さらに、事業を始めて税務申告を2期終えていない人には、「創業支援貸付利率特例制度」でここから0.65%下がる仕組みもあります。
出典:公庫 利率表/創業支援貸付利率特例制度(いずれも2026年10月13日確認)
3. 自己資金は「要件なし」でも、準備したほうがいい
以前は「創業資金の10分の1以上の自己資金」が要件でしたが、2024年度からなくなりました。
ただし、要件がないことと、審査に通ることは別です。公庫のよくある質問では、自己資金は「重要な要素のひとつ」とされ、実際に融資を受けた人の自己資金は、創業資金の2割程度が平均と書かれています。コツコツ貯めてきた記録(通帳)は、計画の本気度を伝える材料になります。
出典:公庫 2024年度の制度拡充(PDF)/公庫 創業のよくある質問(いずれも2026年10月13日確認)
4. 「特定創業支援等事業」の証明書で受けられること
市区町村が、商工会議所・商工会や金融機関などと組んで行う創業支援です。経営・財務・人材育成・販路開拓を、原則として4回以上・1か月以上かけて学びます。修了すると市区町村が証明書を出します。商工会議所の「創業塾」がこれに当たる地域も多くあります。
証明書があると、次の優遇があります。
- 公庫の創業融資の金利が下がる(上の2章の特別利率)
- 信用保証協会の「創業関連保証」を、事業を始める6か月前から使える(ふつうは1か月前)
- 会社を作るときの登録免許税が半分(法人のみ。個人事業主は関係ありません)
- 小規模事業者持続化補助金〈創業型〉の申請の対象になる(条件は公募ごとに確認)
どの講座が対象か、証明書の取り方は市区町村ごとに違います。お住まいの市区町村か、商工会議所に確かめてください。補助金との順番の注意は創業補助金で失敗しない「開業届のタイミング」に、商工会議所の使い方は40代からの起業・商工会議所の活用にまとめています。
出典:中小企業庁 創業支援等事業計画・ガイドライン(PDF)(いずれも2026年10月13日確認)
5. 創業計画書の書き方(10項目)
創業計画書は、公庫のサイトからExcel か PDFでダウンロードできます。自分で作った計画書を出してもかまいません。項目は次の10個です。
- 創業の動機…なぜこの事業なのか。これまでの経験とのつながりを書く
- 経営者の略歴等…勤めていた会社・仕事の内容・年数、資格。「この事業ができる理由」が伝わるように
- 取扱商品・サービス…何を、いくらで、誰に売るか。セールスポイントと、競合との違い
- 従業員…家族を含めて何人で始めるか
- 取引先・取引関係等…販売先・仕入先・外注先。決まっている相手があれば名前も
- 関連企業…経営している会社などがあれば
- お借入の状況…住宅ローン・車のローン・カードローンなど。隠さずに全部
- 必要な資金と調達方法…設備資金(見積書の金額)と運転資金、それをどう集めるか(自己資金・借入・親族など)。左右の合計を一致させる
- 事業の見通し(月平均)…始めたばかりの頃と、軌道に乗った後の売上・経費・利益。売上は「単価×客数×日数」のように根拠を書く
- 自由記述欄…アピールしたいこと、強みの補足
公庫は、業種別の記入例と、出す前に見直せる「創業計画書セルフチェックリスト」も公開しています。いちばん大事なのは、9番の数字が、生活費を払っても回る計画になっているかです。
出典:公庫 各種書式ダウンロード/創業計画書の書き方/セルフチェックリスト(PDF)(いずれも2026年10月13日確認)
6. 申し込みから融資までの流れ
- 電話かネットで相談の予約(ネットの申し込みは24時間受付)
- 申し込み(創業計画書などを出す)
- 面談(オンラインでも可)。計画の中身と、自己資金・借入の状況を聞かれます
- お店や事業所の予定地を公庫が見に来ることがあります
- 審査 → 契約 → 口座に入金
必要な書類は、創業計画書、設備資金なら見積書、本人確認書類、許可が要る業種なら許認可証、入金先の通帳の写しなどです。融資までは平均3週間程度とされています。個人で申し込むときの窓口は、事業を始める場所の近くの支店です。
出典:公庫 ご融資の手続き/創業のよくある質問(いずれも2026年10月13日確認)
7. 筆者の場合
筆者は、日本政策金融公庫の創業融資を使わずに開業しました。この記事は、これから借りるかどうかを決める方のために、公庫と中小企業庁の公式の情報を整理したものです。迷ったら、まず公庫の窓口や商工会議所に相談してみてください。
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まとめ
- 公庫の創業融資は新規開業・スタートアップ支援資金。限度額7,200万円、設備20年・運転10年まで
- 金利は毎月見直し。女性・35歳未満・55歳以上や、特定創業支援等事業の証明書で下がる
- 自己資金の要件はないが、平均は2割程度。準備しておくほど有利
- 創業計画書は10項目。いちばん大事なのは事業の見通しの数字と、その根拠

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